この度、歴史ある日本社会医学会総会(第56回)を久留米で開催する栄誉を与えていただき感謝申し上げます。九州での開催は第42回(2001年)をご担当された田村昭彦先生以来です。また、私が所属する環境医学講座の第2代教授であられた故高松誠先生が本学会(第22回1981年)を担当されており、今回の久留米での開催に深いご縁を感じます。
本学会のメインテーマを「健康格差の縮小を目指して〜社会医学の役割〜」としました。健康格差とは、所得や職業などに代表される社会経済的な要因の違いによって、健康状態が異なることを指します。社会医学分野では、以前より様々な社会的要因に着目した健康影響についての調査・研究が多くなされてきましたが、国民全体はもとより一般地域住民における認知度は十分ではなく、対策への取組みも十分とは言えませんでした。健康は、遺伝子や生活習慣だけでなく、その人の社会的要因によっても決定されています。これらの要因を「健康の社会的決定要因」と定義し、2005年にWHOが「健康の社会的決定要因に関する委員会」を設置し、2008年に最終報告書を提出しました。その中で、委員会は健康の不平等の削減に向けて行政レベルで社会的決定要因の格差を是正する対策を促進するよう勧告しています。我が国でも2012年に発表された「健康日本21(第2次)」において、健康格差の縮小への取組みが優先課題とされるなど、健康格差の是正への関心が高まっています。
本学会のプログラムを通して、発表者(参加者)の皆さんが、どの集団にどのような健康格差が存在するのか、どのような社会的決定要因と関連があるのか、政策としてどのような対策が必要かなどを共通の視点として議論が深まることを願っています。健康格差の是正に対するアプローチのひとつに、提案された政策に対して、健康影響を予測し、不利益を最小化し、便益を最大限にするような政策形成に資する方法として Health Impact Assessment(健康影響予測評価)があります。本学会では、HIA に関するワークショップを開催します。できるだけ多くの方に参加して頂き、今後の活動に生かしてもらいたいと希望します。
久留米の日本酒、焼き鳥、豚骨ラーメンは自慢です。どうぞ久留米滞在中に是非ご賞味ください。また、久留米は九州のどこに行くにも交通アクセスが便利な所です。この機会に九州を楽しんでください。皆様のご参加をお待ちしています。